コラム / 競馬の「それ、ホント?」
道悪巧者は本当か — 群で分けると少し上回る。ただし馬ごとの差はほとんど続かない
公開 2026-11-04 ・ 数値は毎朝の最新データで自動更新(最終更新 2026-11-04)
雨で馬場が湿ると「この馬は道悪が得意」「道悪は苦手」と言われます。本当に、過去に重・不良で走った馬は、次の重・不良でも走るのでしょうか。全場の結果データから、良馬場19,037レースと道悪(重・不良)10,207レースを数えました。稍重は良とも道悪とも言いにくいので、分類には使っていません。過去の成績は出走表の時点で分かる情報です。
過去の馬場の差で分けると、今回の成績にも差が出る
良と道悪をそれぞれ3走以上走った馬を、今回と同じ馬場の過去の3着内率と、逆の馬場の3着内率の差で3つに分けました。15pt以上良ければ「得意」、15pt以上悪ければ「苦手」です。下の表は今回が道悪のレースの素の数字です。
| 区分(今回が道悪) | 3着内率 | 勝率 | 直近の成績 |
|---|---|---|---|
| 道悪が得意 | 26.4%10,778走 | 7.4% | 30.5% |
| 差なし | 20.2%18,907走 | 5.2% | 22.8% |
| 道悪が苦手 | 24.4%10,351走 | 6.6% | 31.7% |
素の数字では「得意」も「苦手」も「差なし」より高く出ます。両方の馬場で差がつく馬は、そもそも3着内に来る回数が多い馬だからです(直近の成績の列)。そこで、同じ場で直近の成績が同じ帯(10%刻み)にいる「得意」と「苦手」を直接比べました。今回が道悪のレースでは、得意が苦手を+2.5pt(±0.6)上回りました。比べた2群の直近の成績は31.0%と31.0%です。今回が良のレースでは、「良が得意」の馬が「良が苦手」の馬を+1.7pt上回りました。
馬場と関係のない分け方では、差は出ない
この差は、本当に馬場の差でしょうか。走数の少ない2つの率の差で馬を分けると、偶然でも差が出ることがあります。そこで対照として、良馬場のレースだけを使い、開催日の奇数日を仮の「道悪」、偶数日を仮の「良」とみなして同じ計算をしました。
対照の差は−0.6pt(±0.6)でした。本物の馬場で分けた差は、対照の差と誤差の幅を合わせても重なりません。馬場と結びついた差が、群としては観測されたと言えます。ただし大きさは数ポイントです。
馬ごとに見ると、大きな差はほとんど続かない
次に、馬ごとに全履歴の真ん中の日付で前半と後半に分け、前後どちらでも良と道悪を2走以上走った6,973頭を見ました。前半の「道悪の3着内率−良の3着内率」と後半の同じ差の相関は0.02で、対照の0.01とほとんど変わりません。3着内率そのものの相関は0.36あり、強い馬が後半も強いことのほうがはっきり続きます。前半に20pt以上の差があった3,546頭は、前半の差が平均+39.9ptでしたが、後半に同じ向きで残ったのは+0.9ptでした(対照では±0.0pt)。差の向きが前半と後半で一致した馬は51.1%で、ほぼ半々です。
群で分けると数ポイントの差が出るのに、馬ごとの差はほとんど続かない。2つは矛盾しません。1頭の道悪の走は数走しかなく、その成績表の差の大部分はばらつきです。多くの馬を集めると、ばらつきが打ち消し合い、小さな差だけが残ります。「この馬は道悪巧者」と成績表の差から読むと、言い過ぎになりやすいということです。
場ごとには向きが分かれる
今回が道悪のレースで、得意と苦手を直接比べた差を場ごとに出しました(得意・苦手がそれぞれ100走以上の場)。9場でプラス、大井・門別・笠松はマイナス、佐賀は差なしでした。1場あたりの走数は少なく、±の幅が大きい点に注意してください。
数字の表(件数つき)
| 場 | 得意−苦手 | 得意 | 苦手 |
|---|---|---|---|
| 船橋 | +5.7pt±3.0 | 384走 | 340走 |
| 大井 | −1.2pt±2.0 | 869走 | 741走 |
| 浦和 | +0.5pt±3.1 | 405走 | 401走 |
| 川崎 | +3.0pt±2.5 | 573走 | 465走 |
| 門別 | −0.9pt±3.7 | 247走 | 216走 |
| 高知 | +1.2pt±1.4 | 1,790走 | 1,711走 |
| 園田 | +5.9pt±2.5 | 661走 | 549走 |
| 佐賀 | ±0.0pt±1.5 | 1,420走 | 1,559走 |
| 名古屋 | +6.3pt±1.8 | 1,130走 | 1,072走 |
| 笠松 | −0.1pt±3.9 | 271走 | 226走 |
| 金沢 | +4.3pt±1.7 | 1,352走 | 1,534走 |
| 盛岡 | +1.1pt±2.4 | 682走 | 624走 |
| 水沢 | +4.8pt±2.0 | 955走 | 873走 |
この表の読み方と注意点
- 成績表の「道悪で何着・良で何着」の差を、そのまま馬の性質と受け取ると言い過ぎになります。前半の大きな差のうち、後半に残ったのはごく一部でした。
- 「道悪巧者はいない」と示したものでもありません。測れたのは、群としては数ポイントの差があり、1頭ごとの成績表からはそれをほとんど読み取れない、ということです。
- 湿った馬場で前に行った馬が残るかについては「雨の日は本当に前が残るのか」で、同じ形の数え方を回りで試した結果は「右回り巧者は本当か」で示しています。
- 回収率(オッズ)は扱っていません。示しているのは「どれだけ3着以内に来るか」であって「儲かるか」ではありません。人気・オッズは当サイトの予想には使っていません。
どう数えたか
- 対象は各場の結果データのうち、5頭以上が完走したレースの完走馬です。
- 馬場は、良と道悪(重・不良)の2つに分けました。稍重と不明のレースは、馬場の分類にも過去の馬場の成績にも使っていません(直近の成績には入れています)。
- 「得意」「苦手」は、その走より前の、今回と同じ馬場と逆の馬場の3着内率の差が15pt以上ある馬です。どちらの馬場も3走以上、合わせて5走以上ある馬だけを数えています。
- 直近の成績は、その走より前の直前10走までの3着内率で、帯は10%刻みです。得意と苦手の直接の比較は、同じ場・同じ帯に両方が5走以上ある帯だけを、走数に応じた重みで平均しました。±は、走を独立とみなしたときの標準誤差の目安です。
- 対照は、良馬場のレースだけを使い、開催日の奇数日を仮の道悪、偶数日を仮の良とみなして同じ計算をしたものです。
- 前半と後半は、馬ごとに全履歴の真ん中の走の日付で分けました。前半と後半のどちらでも、良と道悪を2走以上走った馬だけです。相関は−1から1の値で、1に近いほど前半と後半の数字がそろいます。
- 馬は馬IDで区別しています。同じ日の結果は、その日の分類に使っていません。素の表は200走以上ある区分だけを載せています。
この結論の限界
- これは関連であって、馬場が着順を決める原因であることを示すものではありません。
- 道悪の日は季節・場・距離・時期が偏ります。距離・クラス・相手の強さは揃えていません。
- 1頭の道悪の走は数走しかないことが多く、馬ごとの差には大きなばらつきが含まれます。
- 当サイトの結果データにある地方の場の走だけでつないでいます。南関4場と、それ以外の場とでは馬の識別番号の体系が違うため、両者をまたいだ移籍は追えていません。中央での走も入っていません。