コラム / 競馬の「それ、ホント?」
右回り巧者は本当か — 差は少し残る。ただし同じ左回りの場どうしでも差は出る
公開 2026-11-01 ・ 数値は毎朝の最新データで自動更新(最終更新 2026-11-01)
「この馬は右回りなら走るが、左回りは苦手」とよく言われます。地方の左回りの場は船橋・川崎・浦和・盛岡だけで、残りの場は右回りです。両方の回りを走る馬は、大井と左回り3場を行き来する南関と、盛岡と水沢を行き来する岩手に集まります。そこでこの2つの地区で、過去の左右差が次の走でも再現するのかを数えました。過去の成績は出走表の時点で分かる情報です。
過去の左右差で分けた群には、今回の成績にも差が出る
両方の回りをそれぞれ3走以上走った馬を、今回と同じ回りの過去の3着内率と、逆の回りの3着内率の差で3つに分けました。15pt以上良ければ「得意」、15pt以上悪ければ「苦手」です。見込みは、同じ場で直近の成績が同じ帯にいる「差なし」の馬の3着内率です。全期間の結果から作った比較の基準で、当時の予想値ではありません。
| 区分 | 3着内率 | 見込み | 差 |
|---|---|---|---|
| 今回の回りが得意大井と左回り3場・直近 平均19.4% | 21.5%806走 | 19.9% | +1.6pt |
| 差なし大井と左回り3場・直近 平均10.6% | 14.2%1,174走 | 14.2% | ±0.0pt |
| 今回の回りが苦手大井と左回り3場・直近 平均10.9% | 10.2%824走 | 13.5% | −3.3pt |
| 今回の回りが得意盛岡と水沢・直近 平均33.5% | 30.9%5,739走 | 26.6% | +4.3pt |
| 差なし盛岡と水沢・直近 平均24.8% | 23.3%10,081走 | 23.3% | ±0.0pt |
| 今回の回りが苦手盛岡と水沢・直近 平均33.8% | 23.8%5,433走 | 26.6% | −2.8pt |
もう1つの確かめ方として、同じ場・同じ帯の中で「得意」と「苦手」を直接比べました。差は大井と左回り3場が+2.7pt、盛岡と水沢が+7.1ptです。比べた2群の直近の成績は、同じ重みで平均すると大井と左回り3場が24.5%と24.5%、盛岡と水沢が33.5%と33.6%でした。直接の比較は両方が5走以上いる帯を数えるので、上の表とは対象が少し違います。ここで言えるのは、この条件で分けた群に成績の差が観測された、ということです。
前半の大きな差の多くは、後半には残らない
次に、馬ごとに全履歴の真ん中の日付で前半と後半に分け、前後どちらでも両方の回りを2走以上走った馬を見ました。前半の左右差が20pt以上あった馬について、後半に同じ向きでどれだけ差が残ったかを数えます。
前半の差は+41.6pt〜+48.2ptありましたが、後半に残ったのは−0.7pt〜+9.1ptでした。差の大きい馬を選んでいるので、前半の差には偶然の上振れも含まれています。20ptの条件を外し、前後どちらも差が0でない馬で左右差の向きが一致した割合は、大井と左回り3場で44頭中63.6%、盛岡と水沢で867頭中55.1%です。
同じ左回りの場どうしでも、差は出る
ここまでの差は、本当に「回り」の差でしょうか。回りは場と一体なので、場の相性と区別できません。そこで対照として、どちらも左回りの場どうしを仮の「左右」に分け、同じ数え方をしました。組によって対象の馬も履歴の範囲も変わるので、数字の大小を細かく比べるものではありません。
数字の表(件数つき)
| 組 | 得意−苦手 | 向きの一致 | 相関 |
|---|---|---|---|
| 大井と左回り3場得意1,298走・苦手993走 | +2.7pt±2.0 | 63.6%44頭 | 0.143着内率 0.49 |
| 盛岡と水沢得意5,739走・苦手5,433走 | +7.1pt±0.8 | 55.1%867頭 | 0.083着内率 0.22 |
| 船橋と川崎得意628走・苦手704走 | +2.5pt±2.1 | 46.0%63頭 | -0.023着内率 0.39 |
| 船橋と浦和得意1,415走・苦手1,108走 | +8.2pt±1.7 | 58.1%136頭 | 0.113着内率 0.36 |
| 川崎と浦和得意1,384走・苦手1,240走 | +2.9pt±1.6 | 53.1%160頭 | 0.053着内率 0.31 |
得意と苦手の差は、回りが違う組で+2.7pt〜+7.1pt、同じ左回りの組で+2.5pt〜+8.2ptでした。2つの幅は重なっています。同じ回りの場どうしでも差が観測されたので、この比較だけでは、左右の違いに固有の影響を取り出せません。見えている差を「回りの巧者」とまでは言えません。今回の走数で測った左右差の前半と後半の相関は、どの組でも3着内率そのものの相関より低く出ました。左右差は少ない走数から作る2つの率の差なので、ばらつきが大きいことも含んだ数字です。
回りが替わった初戦は、場で向きが分かれる
最後に、前走と逆の回りへ替わった馬の3着内率を、直近の成績が同じ帯で前走も同じ場だった馬と比べました(直前の完走が5走以上ある馬)。
船橋+3.5pt・大井−12.6pt・盛岡−1.4pt・水沢−1.8ptでした。南関の差には、場を移ると相手の水準が変わる分も混ざります。この比較では場によって向きが違うので、回りが替わるだけで一律に割り引く根拠は見当たりません。
この表の読み方と注意点
- 左右の成績表の大きな差をそのまま受け取ると、言い過ぎになります。前半の大きな差のうち後半に残ったのは一部で、組によってはほとんど残りませんでした。走数が少ないほど、差はばらつきで大きく見えます。
- 「回りの巧者はいない」と示したものでもありません。測れたのは、今の走数と場の組み合わせでは、回りの差と場の相性を分けられないということです。
- 距離が替わるときについては「距離延長は不利か」で、他の地区から来た馬については「他地区からの転入初戦は様子見か」で測っています。
- 回収率(オッズ)は扱っていません。示しているのは「どれだけ3着以内に来るか」であって「儲かるか」ではありません。人気・オッズは当サイトの予想には使っていません。
どう数えたか
- 対象は各場の結果データのうち、5頭以上が完走したレースの完走馬です。
- 「得意」「苦手」は、その走より前の、今回と同じ回りと逆の回りの3着内率の差が15pt以上ある馬です。どちらの回りも3走以上、合わせて5走以上ある馬だけを数えています。
- 直近の成績は、その走より前の直前10走までの3着内率で、帯は10%刻みです。見込みは同じ場・同じ帯の「差なし」の馬の3着内率で、基準の馬が30走未満の帯は数えていません。
- 得意と苦手の直接の比較は、同じ場・同じ帯に両方が5走以上ある帯だけを、走数に応じた重みで平均しました。数字の表の±は、走を独立とみなしたときの標準誤差の目安です。
- 前半と後半は、馬ごとに全履歴の真ん中の走の日付で分けました。前半と後半のどちらでも、両方の回りを2走以上走った馬だけです。相関は−1から1の値で、1に近いほど前半と後半の数字がそろいます。
- 対照の組は、船橋・川崎・浦和のうち2場の走だけをつなぎ、片方を左、もう片方を右とみなして同じ計算をしたものです。
- 馬は馬IDで区別しています。同じ日の結果は、その日の分類に使っていません。組ごとの表は100走以上ある区分だけ、回りが替わった初戦は300走以上ある場だけを載せています。
この結論の限界
- これは関連であって、回りが着順を決める原因であることを示すものではありません。
- 回りは場と一体です。距離・クラス・時期・相手の強さは揃えていません。大井と他の南関の場のように、場によって相手の水準が違う分も差に含まれています。
- 南関は、両方の回りを十分に走った馬が多くありません。組ごとの差には±の幅があります。
- 当サイトの結果データにある地方の場の走だけでつないでいます。南関4場と、それ以外の場とでは馬の識別番号の体系が違うため、両者をまたいだ移籍は追えていません。中央での走も入っていません。