コラム / 競馬の「それ、ホント?」
他地区からの転入初戦は様子見か — 全体では来てすぐが高い。ただし地区で向きが分かれる
公開 2026-10-14 ・ 数値は毎朝の最新データで自動更新(最終更新 2026-10-14)
よその地区から移ってきた馬の最初の1戦は「環境に慣れていないから様子見」——よく聞く考え方です。そこで、地方競馬の生涯の成績を馬ごとにたどり、前走が別の地区で、次の走も新しい地区だった走を「転入1戦目」として、その後の2戦目・3戦目・4〜6戦目、そして同じ地区で走り続けている馬の走と比べました。数えたのは2024年以降の25,022頭の走です(転入組の走は52,670)。地区は、南関(大井・川崎・船橋・浦和)・兵庫(園田・姫路)・岩手(盛岡・水沢)をそれぞれ1つ、ほかは1場を1つとしています。
転入組を追うと、1戦目がいちばん高い
| 区分 | 3着内率 | 勝率 |
|---|---|---|
| 転入1戦目9,807走 | 36.2% | 14.8% |
| 2戦目10,188走 | 34.6% | 13.0% |
| 3戦目9,354走 | 32.9% | 12.5% |
| 4〜6戦目23,321走 | 30.9% | 10.7% |
| 同じ地区で走り続けている馬281,831走 | 28.0% | 8.9% |
転入1戦目の3着内率は36.2%で、同じ地区で走り続けている馬の28.0%を+8.2pt上回りました。同じ転入組を追うと、2戦目・3戦目・4〜6戦目と走るごとに下がり、4〜6戦目では30.9%と、走り続けている馬に近づいていきます。少なくとも全体の数字では、「1戦目は様子見で、慣れてから走る」という順番にはなっていません。
それまでの成績の帯をそろえても
転入する馬は選ばれた馬で、もともとの力が違うかもしれません。そこで、それまでの地方の成績(3着内率・5走以上)で帯に分け、同じ帯どうしで並べました。
| それまでの3着内率 | 1戦目 | 4〜6戦目 | 走り続け |
|---|---|---|---|
| 〜15% | 30.4%1,321 | 16.4%3,334 | 12.2%36,006 |
| 15〜30% | 29.2%2,018 | 25.5%6,212 | 19.0%71,595 |
| 30〜45% | 32.0%2,118 | 29.5%6,432 | 25.3%66,766 |
| 45%〜 | 42.0%2,845 | 43.5%7,032 | 41.5%64,509 |
帯の大きさで重みをつけて平均すると、転入1戦目は走り続けている馬を+7.3pt上回ります。同じ物差しで2戦目以降を見ると、2戦目+6.3pt・3戦目+5.3pt・4〜6戦目+4.2ptと、差は縮んでいきます。ただし帯によって大きさがまるで違い、それまでの成績が〜15%の馬では+18.2pt、45%〜の馬では+0.5ptでした。前の地区で成績が振るわなかった馬ほど、移った直後の数字が上がっている形です。
行き先の地区で、向きが分かれる
移った先の地区ごとに、転入1戦目と、その地区で走り続けている馬を比べました(帯をそろえた差は、転入1戦目の帯の構成で重みをつけています)。
| 行き先 | 1戦目 | 走り続け | そろえた差 |
|---|---|---|---|
| 門別 | 27.3%774 | 29.9%17,261 | −4.8pt |
| 岩手 | 36.2%1,267 | 28.1%30,455 | +10.8pt |
| 南関 | 38.7%1,712 | 25.3%77,414 | +4.5pt |
| 金沢 | 42.1%955 | 31.8%16,591 | +14.9pt |
| 笠松 | 47.6%966 | 32.7%16,842 | +16.3pt |
| 名古屋 | 27.4%1,425 | 26.6%30,803 | −1.6pt |
| 兵庫 | 24.4%809 | 30.1%42,519 | −8.1pt |
| 高知 | 39.2%636 | 28.9%25,224 | +9.8pt |
| 佐賀 | 41.5%1,263 | 26.2%24,722 | +18.2pt |
帯をそろえた差がプラスだったのは9地区中6地区(大きい順に佐賀・笠松・金沢・岩手・高知・南関)で、兵庫・門別・名古屋はマイナスでした。マイナスの地区では、転入1戦目はむしろ走り続けている馬を下回っていて、「様子見」の通説に近い形です。「転入初戦は割り引く」「転入初戦は狙い目」のどちらも、地区を区別せずに言い切ることはできません。
出走表の時点で分かる形でも同じか
ここまでの「転入」は、次の走も新しい地区だったかどうか(結果の後で分かること)で決めています。出走表の時点では、その馬がそのまま居つくのか、1回だけの遠征なのかは分かりません。そこで、前走が別の地区だった走をすべて数えると、3着内率は35.8%(12,250走)で、転入1戦目の36.2%とはほとんど変わりません。次の走で元の地区に戻った「遠征」だけでは34.2%(2,443走)でした。
この表の読み方と注意点
- 転入1戦目が高く出るのは事実ですが、理由は測っていません。移った先でのクラスの格付け、相手の顔ぶれ、陣営がどんな馬を移すか、などがすべて混ざった結果です。
- 「それまでの成績の帯」には前の地区での成績が入っています。地区によって相手の強さが違うので、帯をそろえても地区の水準の差は残ります。
- 中央(JRA)から地方へ来た馬は数えていません。中央帰りは「中央帰りは買えるのか」、厩舎が替わった初戦は「転厩初戦は買えるのか」で測っています。
- 回収率(オッズ)は扱っていません。示しているのは「どれだけ来るか」であって「儲かるか」ではありません。人気・オッズは当サイトの予想には使っていません。
どう数えたか
- 対象は、地方競馬の生涯の成績(各馬の詳細ページの全走)のうち、完走した走です。南関と楽天競馬の2つの経路で同じ馬が別々に載っていることがあるため、最初の4走の並びが同じ馬は1頭として数えています。
- 地区は、南関(大井・川崎・船橋・浦和)・兵庫(園田・姫路)・岩手(盛岡・水沢)をそれぞれ1つ、門別・名古屋・笠松・金沢・高知・佐賀は1場を1つとしました。
- 「転入1戦目」は、前走が別の地区で、次の走も同じ(新しい)地区だった走です。そこから同じ地区で続けて走った走を2戦目・3戦目・4〜6戦目と数えました。
- 「走り続けている馬」は、前走も同じ地区だった走のうち、転入から7戦目以降か、転入で来たのではない馬の走です。
- 前走が中央(JRA)・海外だった走と、デビュー戦は数えていません。
- 「それまでの3着内率」は、その走より前の地方の完走の3着内率です(5走以上の馬のみ。5走未満は帯の比較から外しています)。
- 帯をそろえた差は、両方の区分が30走以上ある帯だけを、転入1戦目の走数で重みをつけて平均しました。地区別の表は、転入1戦目が300走以上ある地区だけを載せています。数えたのは2024年以降の走です。
この結論の限界
- これは関連であって、転入したこと自体が成績を上げる(下げる)という因果ではありません。
- 「転入」の判定には次の走を使っているので、出走表の時点では分からない情報が入っています(出走表の時点で分かる定義での数字も本文に載せています)。
- 帯は4段階の粗い分け方で、帯の中にも力の差は残ります。クラス・距離・頭数・休み明けかどうかも揃えていません。
- 地区ごとの数字は母数が数百〜千数百走で、大きめに振れます。